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番外編 小説家さんと赤いギター
やっぱり、外で待っていればよかったかなぁ。
ギターの専門店なんて敷居が高いというか素人が勝手にうろうろしてはいけない場所のような気がして、おっかなびっくり大河さんの後ろをついて歩く。
「あの、今日は消耗品を買いに来たんですか?」
「それもあるけど」
前を歩いている大河さんに問いかけながら横の棚に視線を向けると大河さんが使っているのと形が似ているギターがそこに並んでいることに気がつく。
彼のギターもここで買ったのだろうか。
「ご、めんなさい」
そこに視線を向けたまま前に進むと大河さんは立ち止まっていたらしくその背中にぶつかってしまう。
「フミさんこれ持ってみて」
数歩下がって距離を置くと彼が振り返って棚から取ったギターをこちらに渡してくる。
「え、あぁ、はい」
どうして私にギターを持たせるんだろう。と戸惑いつつもそれを受け取ると
「ギター弾くときみたいに」
と言われてギターの表を彼のほうに向けて持ち直すが
「逆だね」
と言って弦のあるほうを左手側に直される。
「違う」
「え?」
何が違うのかは分からないけれど彼は私に渡した黒いギターを棚に戻すと周りの棚を見回す。
「フミさんって、何でいつもギター逆に持つんだろう」
「すいません、もの覚えが悪くて」
今までの人生、何度同じ間違いをするんだと怒られ続けているからなぁ。と反省していると大河さんが違うギターをこちらに手渡してくる。
えぇと、こっち側を左手、こっちを右手で、と考えながらそれを受け取ると大河さんが首を傾げる。
「もしかして、左利き?」
「え?えぇ、元々は」
「元々は?」
「みんなと違うっていじめられたらどうするのって、文字を書いたり食事をするのは右手で出来るようにしたんです。ハサミとか包丁を使ったりは左のままですけれど」
結局いじめには遭っているから、そうする意味があったのかどうかは分からないけれど。
「そっか。左利き」
「何か問題があるんですか?左利きだとギターを弾くのには向いていないとか」
今まで音楽の授業で使ってきたリコーダーやピアノには右利きのほうがいいとか、そういうことは無かったと思うのだけれど。と当時のことを思い出そうとしながらそう声をかけると彼は
「ううん」
と首を振り、私に渡したギターを棚に戻すとこっち、と言って私の手を引く。
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