小説家さんとお正月

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『そういえば、今日はブルーのデビュー記念ライブの日ですよね。てっきり電話は通じないと思っていたんですが。会場の列に並んでいるところですか?』 「あぁ、実はチケットの抽選に外れまして」  そう答えながら自分の横を通り過ぎる人を見送り、ここも邪魔かなぁ。と通路を少し移動する。 『そうだったんですか。でもそこで外れるところが先生らしいですよね』 「それは、そうなんですが。外れたって知ったときは本当に落ち込んだんですからね」 『それで、本当に見られないんですか?』 「それが、その、大きな声では言えないんですが。メンバーの知り合いで、ライブで披露する曲の作詞もしているということで」 『関係者席ですか?』 「いえ、そこもいっぱいらしくてステージ脇から見れることになりまして。実は今、もう会場のバックヤードにいるんです」 『それはよかったですね。ステージ脇にいるならちょっとステージにおじゃまして、本の宣伝をしていただきたいところですが』 「冗談言わないでくださいよ。さすがにステージにのぼろうとなんてしたら止められるだけでは済まず追い出されてしまいますよ」 『まぁ、そうですね』  それでもがんばってくださいと言われずにほっとしていると後ろからつん、と肩をつつかれる。 「あぁ、大河さん」  振り返ると普段のボサボサのままとは違って髪をセットしている彼がいて、見慣れていないせいで少しドキリとしてしまう。 『では、原稿に目を通したらまた連絡させていただきます。今後の執筆活動のためにもライブを楽しんでください』 「ありがとうございます」  お礼を言うと通話が切れ、スマホをポケットにしまいながら大河さんのほうに視線を向ける。 「こんなところにいていいんですか?もうすぐ開場の時間ですけれど」 「まだ三十分ある」 「でも、五分前には登場していく場所で待機しないとですし。忙しいものでは無いんですか?」 「そんな直前でバタバタしない。クロ先輩は精神統一してて菜奈村はたこ焼き食べてる。合同ライブのときもいつもそう」 「大河さんにはそういうものは無いんですか?験担ぎのようなものとか」  そう問いかけると彼が私の手をとってどこかへと歩き出す。
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