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まもなく 高専坂 降り口は右側です 開くドア 足元にご注意ください 北海道唯一の・・・ 車内アナウンスが広告になるタイミングで減速し、ホームの床に貼ってあるマーク通りに停車した。数か月前に自動運転に完全移行してからというもの、ずれたところを見たことがない。当たり前だが。 空港行きの路線のこんな中途半端な駅で降りる人も少ない。ましてや学校がまだ始まっていないこのシーズンであれば、ホームに降り立つのは高専の寮生ばかりである。しかし今は午前中であるからなのか、その寮生の姿も見えない。 「おっ、サトシ君じゃないかぁ。久しぶり」 階段を下りて改札を通ると、声をかけられた。 「春休みが1か月ってのは高校生にしては長いよねぇ、十分休んだかい?」 駅員のコマさんだ。特に駅を多く利用するわけでもないのに、いつしか話すようになった。 「お久しぶりです。おかげさまでド田舎で羽をゆっくりと伸ばしてきましたよ」 「ド田舎なんてそんな、実家は市内なんだろ?ココに比べりゃあそうかもしれんけど」 函館訛りと関西弁を足して2で割ったような喋り方をするのを聞くのも久しぶりで、自然と表情が柔らかくなる。     
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