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校門の付近になると、女子の視線はあからさまなものになる。
モデル・佐藤大輝の幼馴染の調子に乗った女、とでも思っているのだろう。
校舎に入り下駄箱の蓋を開けると、もういじめのそれは見て取れる。
案の定ゴミの山だ。
おそらく教室のゴミ箱から拝借したものだろう。
消しカスやら髪の毛やら色々なものが付いている。
まだ、これはマシな方である。一度だけ、鼠の死骸が入っていたことがあった。
「はぁ。」
周りから私をあざ笑う声がする中、私は安心と呆れからため息をつくと、鞄から事前に用意していた替えの上履きを取り出してそっちを履いて教室に向かった。
教室に着くまでが大変だった。
階段を上っている最中に、わざとぶつかってきて私を階段から落とそうとする奴がいたり、廊下を歩いているときには、足を引っかけようとしてくる奴がいたり、と、毎日が命の危機と言っても過言ではない。
そして、教室に着くと、あからさまに白い菊の花が机の上に置かれていた。
「……ん?」
今日はどうやら菊の花だけではなく、手紙も一緒に置かれているようだ。
私は机に鞄を置くと、手紙と手に取って読んだ。
『今日の昼休み、屋上で待っているわ。いつまでも大輝君に付きまとって、大輝君が迷惑していることを知りなさいよね。』
差出人はわからないが、大体の見当がつく。
大輝の熱狂的なファンであり、世界的にも有名な会社の社長令嬢・鈴木愛子が書いたものだろう。
前にも何度かこういう手紙をもらっているのですぐに分かった。
出向くのも面倒だったが、出向かないと出向かないで面倒なのだ。
これは行くしかないだろうな、そう思うとまた更に憂鬱になった。
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