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「ああ、あるよ。ほうらあの三角の形した屋根さ。」
そう言って村人は左の遠く奥に見える三角屋根の建物を指さした。
「そうでしたか。ありがとうございます。」
旅人は礼を言い、
「…ところで、ちょっとお聞きしたいんですが」
「うん、何だい?」
「ちょっと気になったんですが、あそこの家に住んでる初老の男性なんですがぁ…」
「ああ一太郎さんかい。」
「あの男性ですが、どうも先ほど女性を怒らせてしまっていたみたいで。…でも女性の方は、どちらかというと怒らせるような態度をとっていたというよりは、何かお願いをしていたような…」
「ああ、そいつはそうだよ。一太郎さん、いつものことだ。あの人はぁ本当に薄情者だからねえ。」
「そうなんですかぁ。…でも、いつものことっていうんじゃあ村じゃ相当嫌われてるんじゃあ」
旅人は、しまったこれは言い過ぎた…すぐに思った。でも、もう遅い。そんな彼の一瞬の後悔を裏切るかのように、村人は返した。
「いやあ、だあれも一太郎さんのこと、悪くは言わないよ。…そりゃあ勿論、追い返されたその時はみんな気持ちは良くないものさ。でもねぇ…言ってしまえばぁ、だぁれもあの人のこと、そう強くは責められないんだなぁ。」
「ええっ?どういうことです?」
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