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「それは良いことじゃないですか。」
「そうなんんだ。しかも一太郎さん、足腰が相当疲れていた茂原屋さんのために、薬屋まで走っていてわざわざ薬も届けてくれたんだとか。茂原の奥さん、お代は幾らだったかって何度も聞いたんだけどそんなのいいって一太郎さん。」
「聞けば聞くほど良い人だったんんですね、一太郎さんは。」
「そうなんだ。」
「でもそれじゃあ益々わからないですよ。…どうして一太郎さんは村一番の優しい青年から村一番のあんな薄情者になってしまったんですか?」
「その日はそうやって助けて終わった。でも、実はその次の二日後の朝、茂原屋の奥さん一太郎さんを訪ねて来たんだ。」
「はい。」
「どうやら奥さん、どうしても一太郎さんにお礼を言いたくて…自分の用が済んでこの村を発つ前に、とわざわざ家を聞いて会いに来てくれたらしい。」
「ええ。」
「そこでただお礼を言って帰るかと思いきや…茂原屋の奥さん、お礼にって物凄い額の大金を渡そうとしたんだと。」
「いやあ、それは良かったですね。村一番の優しさが報われたんですね。」
「そうなんだ。普通だったら喜んで受け取るようなもの。…一太郎さん、それを頑なに断るんだよ。」
「ええっ、勿体無い。」
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