0人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうなんだが…まあ最終的には無理矢理受け取らされてしまってね。…実はこのことで一太郎さんあんな風になってしまったんだ。」
「…どっ、どういうことですか?…大金をもらったのに薄情な振る舞いだなんて。…結局一太郎さんの身勝手なんじゃ…」
「そうじゃないんだよ旅人さん。あの優しい一太郎さん、実は大金をもらった後、ひどく心を病んでしまってねえ。…こんな大金をもらうために俺は人助けをしたかった訳じゃないって。」
「はあ…。」
「そんでもって毎日、申し訳ない申し訳ない…って言って暗ぁくなっちまったんだ。そんである日突然、あんな風に薄情者になっちまったんだ。」
「…んん、あのうまだ原因がはっきり見えてこないのですがぁ。」
「…後で本人に聞いたんだが、薄情者に突然変わった理由、…それは、もう二度と人を助けてお礼をもらったりなんかしたくない。そうすることであんっな申し訳ない気持ちに苛まれる日々をもう送りたくないからだって。…だからこの村の人らはみんな、あの人を責めるに責められないんだよ。」
それを聞いた時、旅人はふと思った。助けてもらった人へのお返しは高すぎても良くないのかもなあ、と。話を聞いた後、そんな気持ちを持ちつつも、どうか自分は道で膝をつくようなことはするまいと気を引き締めながら、宿への道を歩いて行くのであった。
最初のコメントを投稿しよう!