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「何してるんですか!」
大広間に奈緒美が入ってきた。俊子が戻ってくるのが遅く、呼びに来たところ、勇のただならぬ悲鳴を聞いて慌てて飛び込んできたのである。
そこでみた光景は…… シャツを腕まで捲り上げられ、ハーフパンツとブリーフを足首まで下げられ、ほぼ丸裸の勇を上から押え込む俊子の姿だった。
夢にも思わない想像の範疇を遥かに超える恐ろしい光景である。
俊子が奈緒美の方を向いた瞬間、隙が出来た。俊子が勇の足を抑える力が弱まったのである。勇はその一瞬を見逃さずに素早く足を引き、そのまま俊子の腹を蹴飛ばした。股間丸出しと言う実に情けない姿ではあるが、状況が状況だけに仕方ない。
勇の蹴りの直撃を腹に受けて苦しむ俊子。勇は必死で捲り上げられたシャツを下に下げて腕の自由を戻した。それと同時に足首に引っかかっていたブリーフとハーフパンツを上に上げる。勇は顔を泣き顔でくしゃくしゃに崩しながなら奈緒美の方に駆け寄る。
「お母さん! 助けて! ちんちん切られそうになった!」
奈緒美は勇が何を言っているのか分からなかった。とりあえず抱きしめた後、自分の後ろに隠れさせる。
俊子はよろよろと起き上がり、糸切りバサミをシャキンシャキンと鳴らしながら二人の方に寄ってくる。
「この鬼子を渡すんだよ! 二度と悪さ出来ないように、アソコをちょん切ってやるんだからねぇ!」
「本気ですか!」
奈緒美の表情も修羅となっていた。それが向けられるのは俊子に対してである。
「ああ、本気だよ! 巴に手を出そうとする悪いものは切っちゃわないとねぇ! ろくなものにならないよ! あたしはよく知ってるんだ!」
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