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 照義の見る目は正しかった。勇の本を大量に読んで得た幅広い知識、それを一瞬で頭の中から引き出す力、そして新しい知識を貪欲に得ようとする探究心。どれを取っても自分が教鞭を執っている大学の学生よりも優れていた。 いけないとは思いつつも自分の研究の雑用にまで使っていたが、嫌な顔ひとつせず完璧にこなしていた。甥っ子だから特別扱いをしている訳ではなく本当の助手として採用したいとさえ思うようになっていた。 「勇ちゃん、大学はうちに来なさい」 夏休みの終わりに照義は勇に対して述べた。本当に勇を評価しての賛辞の言葉でもある。 「伯父さんと一緒に民俗学の研究をしよう! 伯父さん偉くなって勇ちゃんを教授に推薦してやるからな」 「ごめんね。こういった縁故採用みたいなの嫌い」 「真面目だなあ。でもちょっとは考えておいてくれよ」
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