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こめかみから脳の奥深くに、ずきん、と割れるような痛みが走り抜ける。
「……っ」
覚えのある痛みにふらりとよろめき、しかし左手で頭を押さえながらも踏ん張りを利かせて、なんとか部屋に入った。
ーーほら、やっぱり君のことなんか覚えちゃいなかったろう?
頭の中で、嘲笑混じりの低い声が響く。
「……いいんだ」
背後のドアに凭れかかると、そのままずるずると床にへたり込む。“彼”は相も変わらず嘲るような口調で続ける。
ーー贖罪のつもりかい?
「違う……」
項垂れ、喉の奥から絞り出すように独りごちた。単発的に息を荒らげ、両の手で頭を抱える。
ーー自分の父親の死に君が関わっていると知ったら、彼女はなんて思うだろうね。
内側で響く“彼”の声に、リンの姿がよぎり、はっと目を見開く。
「やめろ!」
今、この場で彼女に言うつもりなのかーーそれだけは避けなければならないと、咄嗟に声を張り上げる。だがハルの反応を楽しむかの如く、“彼”は喉を鳴らしくすくすと笑う。
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