#.03 side L ‐熱を覚えた‐

29/30
273人が本棚に入れています
本棚に追加
/503ページ
   しかしやはり本心は語れず、もどかしさに視線を逸らしてしまう。 「まあ、ただの根拠のない心理テストだから、必ずそうとは限らないよ」 「えっ?」  リンの心中を察したのか、ハルは半目しながらふっと笑みを溢す。その言葉を聞いて沈みかけていた心に淡い光が差し、弾かれたように顔を上げる。  そうだ。ただの心理テストなのだから、外れている可能性だって十分あるはずだ。それに、以前みたいにからかっているだけなのかもしれない。 「そうよね。必ず当たってるとは限らない……よね」  吹けば飛んでしまうほどのかすかな希望だったが、今はそれが()り所だった。肩の力が抜けて口元を綻ばせ、安堵の表情を浮かべると共に、リンの脳裏にあることがよぎる。 「そういえば、友達が今度(うち)へ遊びに来たいって言ってたんだけど、駄目?」  やや顎を引き、窺うように彼を見上げ訊ねる。求める答えは『イエス』でもあり『ノー』でもあった。リンの中で期待と独占欲がせめぎ合う。  
/503ページ

最初のコメントを投稿しよう!