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ーー同日、午後10時。自室の一番奥にある椅子に腰かけ寛ぐハルの姿があった。ネクタイを外しシャツのボタンをひとつ分緩めた彼は、おもむろに目の前の机の引き出しを開ける。
中から取り出したのは、もう随分と色褪せた黄色い折り紙。何かの鳥を模したであろうそれを眺め、ハルは1人溜め息をつく。
(やっぱり、無理だ……)
側で見守るだけでよかった。彼女が幸せならばそれでいいはずだったのに、気がつけば他の誰にも渡したくないと思うようになっていた。
本当は、彼女が他の男といることすら考えたくもない。ハルの本懐は、内心ごちた言葉とは裏腹なものだった。
先刻の心理テストでもそう。苺を最初に食べるなんて嘘で、実のところ最後まで取っておくとても慎重派なタイプなのだ。
「……ふっ」
心理テストをした時のリンの反応を思い出し、自然と顔が綻ぶ。あまりに予想どおりの反応をされるとついついからかってみたくなる、困ったものだ。
しかし、なぜだか彼女といる時間は他のどれよりも楽しく感じた。暖かな部屋の照明を受ける折り紙を見つめながら、ふとそんなことを考えてしまう。
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