雨傘とチョコレート

プロローグ

そんな時、いつも通るコンビニの前にさしかかった。
チョコレートを宣伝する軒先のピンク色の横断幕が目に入った。
　こういうのを「魔がさした」というのだろう。
　私はそのままコンビニに入っていき、渡すアテもないのに二千円のきれいな箱に詰められたチョコレートを買っていた。
　自分がバカなことをしたと気がついたのは、財布からお札を二枚抜いて店員さんに渡し、レシートを受け取ったときだった。
　私、なにやってるんだろう。お小遣い、月五千円なのに。なんでドブに捨てるような真似したんだろう。
　本当に自分が理解できない。
　残りの帰り道でずっと考えていたのはそのことだった。疲れていたのかもしれないけれどなんでまたこんな愚行を……五分前の自分をぶん殴るか、必死でコンビニを通らないルートに誘導したい。
　それにしても、買ってしまったチョコをどうしたものか。小さいチョコなのに、どうにもそれが入ったレジ袋が重く感じる。
　食べられないレベルでまずいものや危険物、体調が悪すぎる時以外は食べ物は美味しく頂く主義だ。だからチョコレートにそれほど高い水準を求めていない私だけれど、食べはするつもりだ。
　でも別に要らないんだけどな。買ったバカ誰だよ。私だよ。