プロローグ

6/20
前へ
/20ページ
次へ
翌朝。あれからは特に変わったことも起きず、私は昨日と同じように学校の席に着いた。昨日の甘い匂いはすっかり消えていて、教室はすっかりいつも通りだった。  「はいホームルーム始めますよー」  担任教師が教室に入ってきた。  ざわざわ、とどよめくクラスの人々。どうしたんだ、と思い伏していた目を上げると、それはどよめくのも当然かもしれない。  転校生と思しき男子生徒が担任にくっついて入ってきたのだ。  「本日づけで天候してきた笛吹晴日(うすい はるひ)くんです。仲良くするように」  「クラス替えまでの短い期間になってしまいますが、よろしくお願いします」  たしかにタイミングが微妙すぎる。学年末の考査が終わったから授業も消化試合と化しているし、親の仕事かなにかにしても進級のタイミングを待てばよかったのに。  「笛吹の席はそこになるから。いろいろ勝手が分らないと思うので、近くの人が教えてあげるように」  担任が学級日誌で指したのは、私の右斜め後ろの席だった。  これは話さなきゃまずいやつか。あまり初対面の人と話すのが得意ではない私は、内心泡を食った。園花よろしく、と思ったが、園花が今日学校を休んでいることに気がつく。そういえば今日部活の大会があるとか言ってたっけ。  笛吹くんはみんなが机の脇に置いているリュックをどうにか踏まないようにしながら、席に座った。  「はい、では連絡始めますね。今日の掃除は五班で……」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加