疾走

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疾走

 さきのおかげで、母からの虐待に近い行為はなくなった。しかし、生活が苦しいのに変わりはなかった。  さきが行方不明になってから2年が経った。くるみは6歳になった。さきは戻ってこないと見なされ、遺影のように写真が飾られてあった。くるみは未だにさきの当時の事実に気づいてはいない。  もちろんのことだが、くるみは幼いので生活が苦しいことの自覚はない。  くるみは、いつも通り学校の友達と遊びに行っていた。その日は本当に楽しいことがありすぎて、母に早く話したくて仕方がなかった。そして、心を弾ませながら家に帰った。  「ただいま!ママー!聞いて聞いて、今日ねすっごく面白いことがあったんだよ!」 そう叫んだが母の返事はない。くるみは家中を探したが、あるものをテーブルの上に見つけた。 「くるみへ。ごめんね、くるみが悪いわけじゃないんだけどもう一緒に暮らせないの。だから、さようなら。」母からの書き置きだった。 くるみは状況を理解することができなかった。  くるみは幼いが、子供だけじゃ家に暮らせないことは分かっていた。だから、選択肢は1つ、独立することだけ。  母の疾走に伴い、ここからくるみの大冒険が始まったのだ。    
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