最後のひと口、難しい匙加減

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     5限終わりの時間。冬場だと既に真っ暗だ。授業中からどんどん暗くなり始めるから、多くの学生が授業が早く終わらないかとことさら願いたくなるだろう時期。  しかし今日は授業後でも帰らない瑞希だ。食堂で勉強しながら「友人」を待っていた。  正確に言うと授業が同じだった友人と一緒に、課題をこなしながら、これから一緒になる別の「友人」を待っていた。 「瑞希、これからデートなんでしょ? 眉間に皺寄ってるよ」 「やだな、やめて。――これ来週提出でしょ? あーむり……」 「ね、今から来る瑞希の彼って医学部の人なんでしょ? 一体どうやって出会うの? そんな縁ないじゃん普通」  確かに瑞希とこの友人が属する文学部は、基本的に医学部と全く違うところに講義棟がある。さらに食堂もそれぞれ1つずつ講義棟の近くにある。どちらかがもう片方の授業を取るなどしなければ会うことはまずない。  それでも出会ってしまっているのだが。 「まぁね。何つう悪戯っていうのか……いや、逆に運命じゃない?」  うぅんと両手を上にやり、伸びをする瑞希。 「……お手上げです! ――あ、来た」 「――あっ、じゃあ私はこれで。また明日ね」 「はぁい、おつかれー」     
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