最後のひと口、難しい匙加減

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  「は!?」  彼は持っていたカップを落とした。幸いテーブルのすぐ近くだったので転がらなかった。  ぽ、と頬を染めた彼女。気づいたら彼の腕を掴んでいた。夏だというのに彼は薄手のカーディガンなど着ている。屋内が無駄に冷えるかららしい。 「……ね……デート行こ」  彼は慌てて近くに他の人がいないかきょろきょろした。幸い、夏休みに入ったばかりの夕方の食堂に用がある学生はそんなにいない。 「で、でーと……ええ?」 「遠出する? デート(・・・)を素直に取らないんだったら」 「ちがうよ! ちょっと、真面目な話じゃなかったの」 「真面目だもん」  彼女は腕から手首、そして彼の指までカーディガン越しに撫でてきゅっと手を握った。 「あの……やっぱりすき」 「それ何なの……反則」 「すきだからまずは……付き合うことから……」 「反則だべ」  彼は項垂れた。耳がほんのり赤い。  彼女も照れてちょっとだけ頬を膨らませて目を伏せた。 「うん……反則。知ってる。でもあんたのせいだかんね」
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