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答えられないし顔も上げられない彼女。
そんな瑞希の肩を、蒼がそっと抱き寄せてきた。
「――こっち向いて」
蒼の低い声。
彼の声で彼女は魔法にかかったみたいになっていた。のぼせた熱で拒む気持ちは分からなくなり、ぼうっとする頭。――気付いたら大人しく顔を上げていた。
ふ、と蒼の吐息が瑞希の唇を撫でた。
目を閉じて唇を受け入れる。前触れもそこそこに熱い唇が重なった。
初めてのキスは音もなく、ただただその熱だけが植え付けられて終わった。
――ああ。どうしようもなく好き。
瑞希の胸の中でその恋心は硬い殻を破ってもくもく膨らみ始める。――ただし、大きなしこりだった。
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