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「俺のせいじゃないよ。君が負けたんだ」
「負かした」
「先に好きって言って折れたのはそっちだ」
「好きにさせた。――好きだから」
彼は微笑みながら首を横に振った。相変わらず耳は赤い。
彼女が彼の顔を覗き込むように首をぐいと傾げた。
「――絶対内緒ね?」
「そうに決まってるよ」
「ねえ返事は?」
「……そこに書いてあるじゃない」
彼は彼女の荷物を指さした。帆布の手提げの上。書物の内容をまとめたプリントを入れたクリアファイル。そこから見える一節だった。
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