最後のひと口、難しい匙加減

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“Whatever our souls are made of, his and mine are the same.” (Wuthering Heights by Emily Bronte) 「魂が何でできていようとも、彼の魂と私のは同じ」(エミリー・ブロンテ「嵐が丘」)  彼女はそれを見て、ますます頬を染めた。 「それずるい」  しかし、彼女はそのまま泣きそうに眉を下げた。首を振る。 「しかもこれドロドロの悲劇なんだよ?」 「そんな文脈でこれ出てくんの?」 「はぁ……フフ、でもらしくっていいや、ありがと」 「何か……ごめん。びっくりするくらい頭悪いこと言って……」  失笑する彼の手を、彼女は「ううん」と首を振りつつ握り続けた。  それが半年ほど前、夏のことだった。アイスが美味しくて、ついでに初めてのデートも甘酸っぱくて眩しいような時期だった。
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