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はあ…で、まあ、10歳の誕生日の日、俺はとあるモノをお父様から頂いた訳だが…
それが、この銀色のロケットペンダント。
此処に来るまで、ロケットを開けない事を厳命されて渡された代物。
んー、なんかサプライズだの何だの言っていたっけか?
よく覚えていないな。
…いや、どんな過程で作られたかとかは聞いたから、その辺の事なら知ってるんだぞ?
えっと、確か…
慰霊の写真入りロケットペンダント。
結果的に実父の遺品となってしまった。
2人(実の両親)の魔力を全力で込めた超絶頑丈で、あらゆる危険から我が子を守る機能が付いている。
2人の我が子への溺愛と過保護ぶりが伺える一品。
この国の民は学園に通う為、10歳になると親元を離れ、寮生活を送る。
その学園生活の間に何かあっては心配だと、結婚して割とすぐ位の時に2人によって共同制作された。
(中の写真以外全て手作りだが、2人とも何気にスペックが高かった為、熟練の職人が作ったかのような完成度を誇る。我が子専用のため非売品だが、もし値段をつけるとしたら、エラい額になる事が見込まれる。)
中の写真は親元を離れても、我が子が寂しく無いように、そして少しでも我が子と寄り添っていたいからという理由で、結婚してすぐの家庭内が穏やかな頃に写真屋を呼んで撮ってもらったもの。
一枚はフォーマルな服装での立ち姿。
もう一枚はにこやかに夫(実父)と話す妻(実母)と、妻と話すワンコ化した夫という日常風景(オフショット的な)。
写真は、ほんの少しだけ魔力を流す事で、切り替えられるようになっている。
夫は、妻の前では年中死んでる表情筋も多少柔らかくなるのか、珍しく柔らかな微笑みを浮かべている。
妻も穏やかで優しい笑みを浮かべているが、両親揃って、まだ出来てない我が子を思い、慈愛を湛えた目をしている。
俺とルノ兄様が部屋に来る前に、息子をよろしく頼むと遠回しに伝えた時に一緒に渡していた。
って事らしい。
…いや、こんだけ話しておいて、サプライズも何もないと思うんだが?
更に何かあるのか…?
このペンダントに?
…ま、とりあえず、墓地に着いたんだし、見てもいいだろう。
此処まで一度も開いてないし。
そんな事を考えながら、徐ろに胸元を弄った。
指先に触れた金属特有の冷たさを感じながら、ペンダントを取り出した。
そして、人差し指と親指で金具をカチリと捻り、そっとロケットを開く。
ジジジ……ポワン
唐突に、空中にメッセージが浮かび上がった。
『私達の愛しい子』
『あなたに神の御加護がありますように』
男女の肉声で読み上げれたそれは…親が子に愛を示す為のもので…
男の方には、覚えがある…多少違うが。
……ああ、いや、女の方には全く覚えが無いんだがな…
……これは実の両親の肉声みたいだな。
…お袋の声、初めて聞いた。
澄んだ鈴の音のように、透き通った…とても綺麗で、愛と幸福に溢れた…優しい声だった。
親父も、月夜のように落ち着いた…とても柔らかくどこか儚い、穏やかで愛に溢れた…静かな声だった。
……声優目指せるどころか、この声…俺の好きだった声優さんの声だ…
親父とはロクに話した事なかったからな…全く気づかなかったが…
あの声優さんは、声の使い分け?というかキャラの演じ分けが大変上手な方でな…気づかなくても仕方ないレベルで、凄い人だ。
…花恋の声優陣、結構豪華だったしな。
モブの両親にすら、人気声優を起用するとは…
はぁ…いや、絶対美形だろ、これ。
美形夫婦とか、何それ眼福だろ…
…って、いつの間にかメッセージ消えてたんだが。
もう一度見れないかな…
ーー格闘する事、およそ5分。
…チッ、駄目か。
んお?カバーの裏になんか書いてあるぞ?
どれどれ?
【レ・リュトワール】
訳は…確か、【私達の星明かり】
…俺に、星明かりなんて似合わないと思うんだがなぁ…
普通は宝物や星、月、太陽…などの意味を持つ言葉を使うし。
星明かりを使う場合、多くは
『絶望の中でも諦めず、立ち向かう存在』
『暗闇で変わらず光り続け、人々に感動と希望を与えてくれる存在』
になってほしいという二重の祈りが込められているんだ。
…いや、どこの勇者だよ!
少年漫画の主人公かっつうの!
モブ転生した奴にそんな期待されてもな…
高スペ連中に勝てるわけが無いだろ?
こんなしっかりと刻まれたんじゃ、変えようもないぞ?
メッセージを再生出来ない代わりに、この言葉を刻まれたんだろうが…
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