第1話 贈物

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刻まれた文字をそっとなぞると、それは僅かに熱を持っていた。 その暖かさが、ひどく優しくて… 親の愛とはこんなものなのかな、なんて思ってみたり… 中に入っていたのは、1組の男女の写真。 男の方は、錫色(すずいろ)の髪に、左眼は杏の花を思わせる蘇芳香の瞳孔・薄桜の目、右眼は梅紫の瞳孔・紫苑色の目。 スラリとした長い手足、細身で色白。 表情筋が年中死んでいそうな感じでなければ、大層おモテになったであろう顔立ち。 一言でいうなら、超絶美男。 女の方は、白橡(しろつるばみ)の髪に、白緑(びゃくりょく)の瞳孔、マラカイトのような緑青(りょくせい)のツリ目。 スラッとした長い手足、スタイルは程よい・キュ・程よいといった感じ。 陶磁器のような滑らかできめ細やかな肌、桜色の唇。 黙っていると冷たくて怖そうな人に見えるが、笑うと大変可愛らしい。 学園のマドンナなんてアダ名があってもおかしくない超絶美女。 そんな2人がフォーマルな格好で、柔らかな笑みを浮かべている。 …確かにこれは、俺の実の両親だな。 お袋なんて、俺にそっくりだ。 …いや、この場合は俺がお袋にそっくりなのか。 なんか…俺と並んだら、親子というより、姉妹に見えそうだな。 悲しきかな…貧弱な身体付きは、しっかり受け継がれているみたいだから。 親父は…おま誰状態だな。 穏やかで優しい良い人とか、ヘタレとか言われそうだし、何より…良き父親になりそうだ。 色々あって狂ってしまった、という事なのかもしれないが…すごいギャップだな。
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