第1話 贈物

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もう一枚は…確か極少量の魔力を流す事で見れるんだったか? ……ふうっ、……おっ、変わったな。 にこやかに親父と話すお袋と、お袋と話すワンコ化した親父という日常風景(オフショット的な)。…という話は本当だったんだな。 無いはずの犬耳と尻尾が見えるぞ… いや、マジでラブラブじゃねぇかよ… 親父、なんか可愛いな、おい。 お袋にデレデレ…というか、お袋もデレデレじゃね…? はぁ…写真の中でもイチャついてるとか、こりゃ天国でもイチャついてんじゃねぇの? …ホント、呆れた。 目の前で、見せつけてくれたら、揶揄えたのに、よ… ……俺も、愛してるよ。 あんたらにも、神の御加護があらん事を… …会いたかったな。 話したかったよ。 こんな形じゃなくて、直接… …視界が滲んで、きた。 「ありがとよ、親父、お袋…」 「…また、来るよ。」 空を見上げて、彼らを想う。 「…そこから見ておいてくれよ。俺の生き様って奴をよ。」 瞼をそっと閉じ、踵を返した。 「…じゃあな。」 『いってらっしゃい。』 『いってこい。』 …はっ、……そんなん、ズリィ、よ。 頬を伝う涙が、風に飛ばされて、穏やかな日差しに照らされ、きらめいた。 俺の人生の、新たな始まりだ。 …花恋、本格始動、ってか。 …モブらしく、傍観者気取って生きてやるよ。 翠がいないなら、俺は俺として生きるだけだから。
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