第2話 思慕

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カラカラカラ… 馬車の進む音、正確には車輪の回る音だが、それをボーっとしながら聴き続ける。 娯楽の少ない異世界では、暇潰しにスマホでゲームとか、車内で書物を読んだりなんて出来やしない。 活版印刷術が一般化し、書物が比較的安価で手に入れられるようになったとはいえ、やはりまだまだ書物は貴重だ。 前時代的な本は、原本ともなると博物館や図書館の地下室以外ではお目にかかれない。 貴賎関係なく、車内での読書や読書中の飲食はマナー違反だ。 どうしても飲食したい場合は、休憩所か外部の飲食店へ行くしかない。 マナー違反をした者には白い目が向けられる上、その本が貴重であればあるほど、扱いには細心の注意を払わなければ、場合によっては法律違反になる事もある。 まあ、その辺は前世でも似通った所はあるし、マナーを守っていれば、幾らでも本が読めるんだ。 本好きには堪らない世界だよ。 ん?ああ…このマナーは世界共通のもので、国や種族を問わず課されているんだ。 これを広めたのは、6代目だって話だからなぁ…いや、6代目どんだけ頑張ってんのさ… マジ尊敬するぜ…
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