第2話 思慕

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…まあ、話は逸れたが、今俺は馬車に乗っている。 何処に向かってるのかって? 学園だよ。例の乙女ゲーの舞台となっているランタナイ学園。 ムルチャトフ国民は、10歳になったらどっかの学校に入学しなければならないんだが… この学園はこの国一番の進学校で、魔法・武術・学力の3点がバランス良く揃った人材のみが入学を許されるんだ。 …で、ヒロインは入学式後の一週間で隠しキャラ以外の攻略対象者と出会う。 その後、誰のルートに入るかはヒロイン次第だが… 共通ルートはその一週間ぐらいのもので、後は割とバラバラ。行事以外のイベントへの参加も強制的なもの以外は基本自由だしな。 隠しキャラのルートは2年次以降に運が良ければ、ルート解放のパスコードのチケットが手に入れば、攻略可能になるが、…まあ、これはそうそう無い事だ。 ああ、それに本格的な攻略は成人年齢の15歳からで、それまではひたすらステータスを磨いていく期間なんだよ。 一応、ルートには入れるものの、知り合いか良くて友人程度しか好感度も関係も変化しないぞ? 一目惚れされて即完全攻略可能とか、リアルじゃまずあり得ないしな。少しは交流期間が無ければ、関係なんてものは変わりようが無いものだ。 交流を重ねる中で人となりを知り…仲が変化していく。それが普通、というか一般的な筈だ。 そんなリアリティが含まれているのが、花恋という乙女ゲームだ。 そして、俺ことモブのウィルが初登場するのは、何とヒロインが教室に入った時だ。 窓際の一番後ろの席で窓の外を眺めている姿が、他のクラスメイトの様子と共に描かれていた。 ヒロインはウィルの斜め前の一つ前、つまり窓際から二列目の後ろから3番目の席に座る。 スチル的に右端に映るか映らないかレベルの席位置関係だが、モブとしては妥当な扱いじゃないだろうか。 隣の席、教室のど真ん中の席とその後ろの席に攻略対象がいる。 隣のクラスと他学年や研究室に其々一人ずつ居るが…合同授業でも無い限り、そう頻繁には会わない。 ルート選択によって、将来の学科選択も変わってくるが、何気にウィルはスチルの中に必ず居る。 大体が見切れたり、ちらっと見えたり、ボンヤリと写ってたり、小さく写っていたりなど、あまりマトモに写っている姿はないが…隠れミ○キ○を探せ的なワクワク感はある。 俺個人的にも、行く末が気になるからな…スチルと同じ事をしてもいいが。野次馬として駆け付けて、偶然を装って…という感じで。
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