第1話 転生

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 そのせいで、結構どころかかなり暇だ。  此処には、娯楽というものが一切無いからな。  はぁ…全く、自由なんだか籠の中の鳥なんだか、よく分からん扱いだが…  俺は生まれてから一度も外出した事は無いし、乳母以外の者と話した事もない。  1日1食の食事は転送魔法で送られて来るし、下げる時は食事と一緒に付いてくるベルを鳴らせば、勝手に転送魔法が発動して、空の食器が回収される。  (使用人用の賄いでの)余り物のパンとスープが、使い古されてボロボロになった食器に載せられてるだけ。  スプーンやフォークなんて上等なものはない。  あまりに粗末な食事だが、食べれるだけマシな為、文句は無い。  希望を言うなら、タンパク質とビタミンを摂取したいが…今のところ、肉・魚・果物は一度も入れられていない。  その為、一度はうちは実は貧乏貴族なんじゃないかと思ったが、透明化した分身越しに見た屋敷の内装や遠目から見た親兄弟の食事風景や服装で、寧ろ真逆である事が分かった。  ミラドゥゲル伯爵家(うち)の領土の規模から割り出せる大体の税の納入額より、明らかに高い調度品や服、その他諸々…  そこから俺は察した。というか、既にお分かりだとは思うが、うちは何らかの不正をしているんじゃないか、と。  まあ、それに勘付いた日から、透明化した分身の用途に不正の証拠集めが加わったんだが。   警備が杜撰なお陰で、勘付かれずに無事に集めきれたもんだから、何とも言いがたい気分になったよ。
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