第4話 事実①

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…その時点で、彼はしがらみから解き放たれ、自由の身となった。 当主としての仕事があったものの、父の部下であったものにそのまま自分の部下として働いてもらう事で、領地運営も何とかなっていたから。 そのゴタゴタも1、2年程で何とか落ち着いてね…学園に通いつつ当主としての仕事も全うしていた彼は、何とか無事に学園を卒業したんだ。 此処から、君に深く関わって来るんだけど。 …在学中、彼には恋人がいた。 両者とも婚約者の居ない者同士、交際も大変清いもので、2人の仲睦まじさは周知の事実となる程。噂では、結婚の約束もしていたんだとか。 学園を卒業した彼は、彼女を妻に迎える為、色々と頑張っていたんだが… なかなか、スムーズに結婚へと行かなかった。身分差の問題から、2人の結婚を周囲が認めようとしなかった上に、どうしても結婚したいなら、同格の令嬢を正妻として迎えてから、彼女を第2夫人もしくは愛人として寵愛せよ、と言われていたんだよ。 いくらこの国では約束事が優先されるとはいえ、慣習というものはそう簡単に撤廃することは出来ないからね。 貴族としての慣習という視点で見ると、周囲の意見は正論だし、彼もそれを承知していたからこそ、正妻になってもらえる令嬢を探していたんだ。 ただ、その頃には残っている令嬢は皆特殊な事情がある者や問題児しかしなくてねぇ…まあ、所謂行き遅れの女性なんだけど。 それでも何とか探し出して、了承を貰えた女性が問題だったんだ。 その女性は金遣いが非常に荒く、男遊びも大変激しい…巷では悪女として有名な人で… 女性が結婚を了承したのは、彼が眉目秀麗…まあ、表情筋の死に具合を考慮しなければ、なかなか見れた顔・身体つきだったから…それと、彼の領地の税収や商売が割と安定していて、金づるには持ってこいな存在だったから。
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