第1話 転生

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 俺の名前は、ウィメルタス・レノス・ミラドゥゲル。  オクタゴン大陸南東に位置するムルチャトフ王国ミラドゥゲル伯爵家次男だ。  そんなお貴族様な俺には、誰にも言えない…というか今のところ誰にも言っていない秘密がある。  それは、俺に前世の記憶がある事だ。それも異世界の。  前世の俺の名前は、冬木(ふゆき) 彗佳(けいか)。某中堅大学の4年生で、第1希望の会社に内定を貰ったばかりの若い男だった。  前世の俺の死因は、暴走したトラックに轢かれた事による典型的な事故死。  隣にいた『アイツ』を覆い被さる形で庇い、そのまま轢かれた。  『アイツ』というのは、前世の俺にとって生き甲斐のような存在で…  正確には、共依存関係から恋人関係へと昇華した、幼馴染で同い年の若い女。名は夏風(なつかぜ) (みどり)。  昔から変わった奴でな。周囲から良くも悪くも目立っていたがとても良い奴だったんだ。  咄嗟に庇ったアイツがどうなったかは分からないが…  激しい痛みで意識を飛ばしたら、次に目覚めた時には赤ん坊になっていたんだ。  意味が分からないだろ?安心してくれ、俺も最初理解不能過ぎて、産声あげ損ねたから。  それでも次の瞬間には、周りの大人達に驚いて思いっきり泣き喚いたけどな。  転生特典かどうか知らないが、その大人達の会話が理解出来た時点で、言語の読み聞きに対する心配は殆ど無かった。  後に判明した事だが、全言語の読み聞きが可能な代わりに、話し書きは出来なかった。  まあ、ちゃんと練習すれば、普通に2カ国語ぐらいは習得出来たが。
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