第4話 事実①

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…君のいう『あの人』が母であるという誤認を訂正しない、ある種の嘘を吐いていた事を、許してやってはくれないか? …不器用な、彼なりの気遣いというか、愛し方というか…これもまた1つの親心という奴だから。…彼が報われなさ過ぎて、お父さん、これでも結構悲しいんだよ? どうしようもない事っていうのは、あるものだから、彼も私も見守るしか出来なかった訳で… ……御墓には勿論連れて行くし、その時は私も一緒に拝ませてほしいなぁ… 彼女に息子さんを、養子として引き取らせていただきました。これから先息子さんを私達家族でめいいっぱい愛して、幸せにしますから…天国からずっと見守ってあげてくださいね。って感じで報告とお願いをしに行きたいんだ。 ……そうかい。了承してくれて、ありがとう。これでやっと君の実母に顔向けできるよ。 …父親が同じ御墓に入るかどうかは分からないけれど、彼の魂はきっと彼女と共に在りたいと、彼女の元へ向かう筈だから… 彼女の御墓から彼に対しても何かしら話しかけてみるというのも良いかもしれないね。 …言っておくけど、国家反逆罪でギロチン処刑のち魔法で作った炎で消し炭にする…なんてのはかなり前に廃止されたし、もう何十年も国家反逆罪が適応された事が無いから、もしかしたら、処刑ではなく、国外追放とか幽閉になるかもしれないよ。 だから…どちらにせよ、もう面会する事は叶わないだろうし、どうなろうと悪女やその子らは勿論の事、衰えてしまった彼ではそう長くは持たない筈だ。棺桶に片足を突っ込むどころの話ではないレベルで、死期が迫ってきてる。そうなれば、実母の御墓から彼に声が届く日もそう遠くないだろう。 …さっきの言葉はこういう経緯があったからこそのもので、君の中身が大人であると知ったからこそできる話なんだ。 普通はこんな話を幼子相手にしないし、親子でする会話にしては、話題が重すぎるからね…普段はもっと明るい話をするものだよ。 言わなくても分かっているとは思うけど、一応ね。
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