第5話 事実②

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あとは、昨日の話の補足説明を色々とされたな… 俺なりになるべく短く纏めてみたから、それで何とか把握してくれ。 生まれた直後は羊水が耳の中に詰まっていて、目も開けづらく、まだ完全に魂が身体に定着しきっていなかった。 だから、当時の俺は、まだ上手に見聞き出来ていなかった。それが勘違いや無知に繋がった。 魂が定着するまでの間に事態は起こっていた。 実母が息を引き取り、実父はショックで憔悴し自暴自棄に陥り、その隣のベッドでは、悪女の子が死産で悪女がその事に対して大変取り乱し、お産に立ち会った乳母が抱いていた子供を、無意識に身体強化魔法を行使しながら、乳母から無理矢理奪い取り、この子を私の子にしなさいと、さもなければ今すぐ此処でこの子を殺すわと実父他立会人全員を脅した。 自暴自棄になりながらも、実母が最期に言った、この子を頼みます。愛してるわ、貴方。という言葉が頭に浮かんでは消えを繰り返していた為に、何とかギリギリ理性を保ち、その要求に応じる事にした。 勝手にしろと言っていたなら、次男は勢いのまま殺されていた事が目に見えていた為、この時の実父のファインプレーは一生涯感謝するべき事であろう。 要求に応じてもらった事で、少しだけ落ち着き正気に戻った所で、何とか説得して乳母の元に子を戻してもらう事に成功した。 この世界では産後に母親に回復魔法をかける事が常識とされており、悪女も例外なくかけられた。 実母の場合、回復魔法をかけても助からない程衰弱していた為、手の施しようが無いまま、あの世へと旅立ってしまったが。 回復魔法のおかげで、何とか動けるようになった悪女はベッドから起き上がり、我が子となった赤子をもっとよく見ようと、ふらつきながらも立ち上がり、ベッドから離れた。 表情は本当の我が子では無い事へのショックを隠しきれていなかった為に、のちに主人公に勘違いを与える事になってしまった。 乳母がそれを訂正しなかったのは、幼子に話すには余りにも酷で複雑な話の為に憚られたから。
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