第2話

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道中は、軽口も交えつつ、彼に問われるがまま、屋敷について分かる範囲で答えていた。 近道を使った為、10分程度で応接室の扉の前に辿り着いた。 (ちなみに通常のルートなら、20分はかかる。如何に俺を近づけたくないかが丸分かりだろ?) 他の扉に比べて、複雑かつ繊細な装飾の施された扉の前で、一呼吸置いてから、三度ノックをした。 重い音の響きが中に伝わったのか、『誰だ。要件を言え。』と言う父の声が返ってきた。 それに『ウィメルタスです。迷われていたアスタルノード・レノス・スノッドル様を此方までお連れしました。』と正直に答え、返答を待つ。 …ああ、嫌だな。この待つ時間が嫌いなんだよ。 冷や汗なんて流れまくるし、心拍数だって上がりっぱなしだ。 このままじゃ身体に悪い。早くしてくれないかな。 そんな思いを心の底にしまい込み、沈黙を貫く事、(おおよ)そ2分。 長いようで短い時間は『入れ。』の一言で終わりを告げた。 「失礼致します。」 「失礼します。」 俺が先に入り、扉を押さえたところで彼も入室し父…否この家の最高権力者《ザールクロス・レノス・ミラドゥゲル》の方へと向き直った。 久しぶりに見た当主の顔は些か疲労が見られるものの、冷酷で厳かな雰囲気は相変わらずだった。 …はて、これから一体全体どうなる事やら。 「とりあえず、二人とも椅子に掛けてくれ。スノッドル伯から御話があるそうだ。」 「はい、失礼致します。」 「はい、失礼します。」 スノッドル伯と向かい合うように俺たちは椅子に座り、目の前の伯爵様を見つめた。 スノッドル伯は、紅茶色の髪に、今紫(いまむらさき)の瞳孔、淡藤色(あわふじいろ)の目のナイスミドルな御方だった。 腹の中までは分からないが、人好きのする顔立ちをしている為、父とは違って第一印象で得をするタイプだ。息子を見る目も心なしか柔らかい。 …粗相の無いようにしたい(・・・)な。 この人の前では、不思議とそう思える。しなければ(・・・・・)ではなくしたい(・・・)と。 俺には、それが少し怖く感じた。何故かは分からないがな。
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