オレンジロードからみかん山に

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オレンジロードからみかん山に

 わたしは退屈な子だった。  白っぽい乾いたブロンドの髪と、同じ色の、目を重たく見せるような白っぽいまつげや眉毛と、灰色に近いはっきりしない青色の目と、かさかさした白い肌と長い輪郭の顔をして、愛嬌もなければ知恵も元気もなく、気の利いたことも言えなくて、誰も遊びに誘ってくれないので、よく校庭や教室の隅で幽霊みたいにぼうっと立っていた。    高校に入って、声をかけてくれたのがカリンだった。 「ルーシー、机運ぶの手伝ってくれる?」 「ルーシー、わたし、この熟語のニュアンスがよくわからないんだけど、ルーシーとか、どういう会話の中で使う?」 いつもとても自然に話しかけてくれるので、いつのまにかいっしょに行動することが多くなっていた。  すごいと思ったのは、カリンは、「何々がわからないから教えて」とか、「何々は一人ではできないから手伝って」とか、いつでもすぐに言えることだ。それも、よく見ていると、必ず、その時それができる人のところに持ちかけている。  そして、誰のことでも、すぐに手助けをする。「お人よし」とばかにされても、利用されたみたいなってしまっても、彼女は気にしないで、「自分がそうしたいから」と言って、誰の事でも助けた。  社交的というわけではなくて、たくさんの人がいる場所では穏やかに「見る側」にいる。議論に加わったり人を率いたりすることもなく、特にいい成績がいいわけでもなく、すごくシンプルに振舞っていたけれど、自分や人のいろいろなものが自然に見えていて、気持ちの深いところで自信がある人なのだろうと感じた。  わたしは自分のことも人のこともわからず、何ができて何ができないのか、誰が何を必要としているのか、何が正しいのか、いつも迷ってしまうので、あたりまえに何かをスッとやってしまうカリンがうらやましかった。
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