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裏通りにある雑居ビルの屋上。 真下は、ほとんど人の出入りのない寂れた店舗の駐車場。 何ヶ月も前から下見をしていたから分かる。 ここならば、誰かに見つかることもないし、巻き込むこともない。 柵を越えると、傾き掛けた日の光で、所々ピンク色に見える雲。 私が一番好きな時間。 目の前に遮るものはなく、空が近く感じられ心地よかった。 ス――ハ――。 大きく深呼吸をすると、さっぱりした気分になる。 最後にこんな気持ちになれてよかった。 「さようなら」 小さく笑みを浮かべつぶやき、空中に一歩足を踏み出す。
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