過去とこれから

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 結局、夢を叶えることしか考えていなかったんだ俺は。専門学校へ入ったからといって、必ずしも就きたいところへ希望通りに行けるとは限らないんだから。  失意の中、やむなく俺は専門学校を中退した。頑張り次第で他の道もあると教えてはくれた担任。どうでもいい話だった。つまらない意地を張っていたせいでもあるのか、最後まで叶わぬ夢を見続けていた。    学生身分を離れた俺は行き場を失った。大学時代の同期はみな就職し、社会人となっている。無職の俺とは天と地ほどの差である。22歳、何とかしなければ。しかし、どうすれば。    目覚めてから既に20分も経っていた。考え事に耽っていると、つい時間を忘れてしまうものである。体を起こした善紀は、ゆっくりと部屋を出た。リビングから差し込む陽の光に目を細める。暑い夏の一日が訪れようとしていた。    椅子に腰を降ろした善紀は、窓の外へと目を向けた。申し分のない青空の下、太陽の光が燦燦と降り注ぐ。何気のない日常。俺は生きている。いや、本当に生きていると言えるのだろうか。     
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