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エスカレーターを下り、ホームに降り立った彼はすばやく2番線ホームの東端にまで移動する。やる事はもう決まっていた。バッグからデジタルカメラを取り出し、構えの体制へと入ろうとしていた彼。この位置からだと、入線してくる列車を捉えやすい。
10分後、電車の到着を告げるアナウンスが流れた。「2番乗り場に、大阪難波行きが6両編成でまいります。危険ですから、黄色い線の内側に下がってお待ちください。」
時は来た。列車が近づいてくるその音に負けないくらいの躍動ぶりを見せる彼。見慣れた近鉄電車を目の前にしての撮影はどうだろう?いつもの電車やな。何気ない顔の乗客たちとは別に、善紀は違っていた。食い入るように列車を見つめたまま、その場を動かない。構えたシャッターボタンに手を掛ける。列車の扉が開いたのはその時だった。
よし今だ!ボタンを押した彼。その直後にはお気に入り車両の8000系が収められていた。やった!得意げに微笑もうとの善紀。列車に足を踏み入れる間も一人にんまりとしていた。
それから10分。程なくして大和西大寺駅に着いた彼は涼しさに別れを告げるかのように列車を降りた。奈良市の中心部辺りに位置し、奈良線、京都線、橿原線の3つの線が通っている西大寺。人々の交通の足として、専ら重要性が高い。
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