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どんよりとした空が、私の心も暗くしそうで、机に顔を伏せた。口の中の飴はあまり味がしなかった。
放課後のチャイムはとっくに鳴った。
教室には私の他に数人の生徒がいる。
雑談が聞こえてくる。今の私には心地よい。
家に帰るには、まだ早い。誰もいない家で一人で食べる夕食ほど、味気ないものはない。
友達と寄り道すればよかったのだろうけど、今の私はそんな気分ではなかった。
私は、失恋した。
失恋したはずなのに、何も感じなかった。
数ヶ月想いを寄せていたはずなのに、フラれたはずなのに、心はあまりにも落ち着いていて、数十分前の出来事がなかったかのようで、自分の感情がわからない。
スマホからは定期的に友人のメッセージが鳴り続けている。
ゴシップ記者のように、私の告白の始終を聞き出そうとしている。
メッセージは返さずにいた、いや、返せなかった。
だって私にも、私の感情がわからないのだから。何を書いていいのかわからない。
教室にいた数人が、帰っていくようだ、話し声が遠ざかっていく。
私はまだ机に顔を伏したままだ。
少しの静けさ、外からは部活動に励む生徒の声がかすかにきこえる。
いつまでもこうしていたいし、何も考えたくない。何も考えたくないのに、そうしようとすればするほど、この数ヶ月は何だったのだろうと思ってしまう。
フラれたからそう思うのかなとかんがえたけど、たぶん違う。
告白をしてる時、想いを告げる時、私は私の言葉に疑問を思ってしまった。本当にこの人のことが好きなのか、疑問に思ってしまったのだ。どうしてかはわからない。けど、これじゃないって思ってしまった。伝えた言葉のように、彼を見ていたのか、わからなくなった。
だから、フラれた時は悲しくなかった。安堵のような他人事のような、とにかく落ち着いて、彼の言葉を受け止めていたのだった。
いつの間にか口の中の飴玉はとけてなくなっていた。やっぱり味はしなかった。
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