放課後

6/6
前へ
/6ページ
次へ
「あるあるって言ったけど、俺にも昔似たような経験があってね、告白するまえにそれに気付いて、何もしなかったけどね。とりあえず、頭使ったから糖分とろ?」 そういって、そいつはチョコレートを頬張りなが、私にもすすめてきた。飴はいつの間にか舐め終えていた。のどが少し乾いていたけど、わたしは素直にすすめられたものを食べた。 甘い。さっきまでは味がしなかったのに、差し出されたチョコレートは甘く、口の中で溶けていった。まるで、私の心にまで、溶けて染み渡っていくようだった。なるほど、確かに糖分は大事かもしれない。 「…甘いね。」 「疲れたり、緊張がほぐれたりした後の糖分ってより甘く感じるよね。甘味は安心の味なのかも。」 「なにそれ、変なの。」 私はふふっと笑みをこぼした。それを見たそいつは、私よりもいい笑顔をしていた。 外は薄暗くなりつつある。 私たちはしばらく雑談し、菓子を頬張り、そして連絡先を交換した。 忘れていたけど、スマホには未読のメッセージが溜まり続けていた。返事をしなければいけないけど、家に帰ってからにしよう。ミルクティーを片手にのんびりと語りたい、そんな気分だ。 季節はめぐり、冬が来た。 私はチョコレートを溶かしている。 甘いもの好きの彼に、喜んでもらえるように手作りのお菓子を用意している。 甘味は安心の味。 私のこの想いも溶かし込んで、彼の心に届くといいな。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加