16人が本棚に入れています
本棚に追加
「あるあるって言ったけど、俺にも昔似たような経験があってね、告白するまえにそれに気付いて、何もしなかったけどね。とりあえず、頭使ったから糖分とろ?」
そういって、そいつはチョコレートを頬張りなが、私にもすすめてきた。飴はいつの間にか舐め終えていた。のどが少し乾いていたけど、わたしは素直にすすめられたものを食べた。
甘い。さっきまでは味がしなかったのに、差し出されたチョコレートは甘く、口の中で溶けていった。まるで、私の心にまで、溶けて染み渡っていくようだった。なるほど、確かに糖分は大事かもしれない。
「…甘いね。」
「疲れたり、緊張がほぐれたりした後の糖分ってより甘く感じるよね。甘味は安心の味なのかも。」
「なにそれ、変なの。」
私はふふっと笑みをこぼした。それを見たそいつは、私よりもいい笑顔をしていた。
外は薄暗くなりつつある。
私たちはしばらく雑談し、菓子を頬張り、そして連絡先を交換した。
忘れていたけど、スマホには未読のメッセージが溜まり続けていた。返事をしなければいけないけど、家に帰ってからにしよう。ミルクティーを片手にのんびりと語りたい、そんな気分だ。
季節はめぐり、冬が来た。
私はチョコレートを溶かしている。
甘いもの好きの彼に、喜んでもらえるように手作りのお菓子を用意している。
甘味は安心の味。
私のこの想いも溶かし込んで、彼の心に届くといいな。
最初のコメントを投稿しよう!