それは抗争のありふれた世界のこと

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 第9カラムからは易々攻め込まれないだろう。  91区画の香取(カトリ)が睨みをきかせているし、玉川の背後の81区画には桂代(カヨ)が控えている。  厄介なのは、84区画に居座ってこちらの隙を伺っている『手裏剣の大角(オオスミ)』だが、奴は直接82区画に攻めて来られない。第8カラムも膠着状態が続くだろう。  班目組の若頭『韋駄天の石飛(イットビ)』は厄介だが、八番通りに留まって守りに専念しているようなので、今は無視していいだろう。 (不気味なのはむしろ、第6カラム65区画に陣取っている奴……、ウチの右近橘をとりやがった銀次(ギンジ)のヤロウだ。しかし、そうフットワークが軽いワケではないからな) 「となると、第7カラムか……」  重鎮である真鍋(マナベ)が71区画を守っているので背後の備えは万全だが、73区画で前衛を務めるのは融通が利かない兵頭(ヒョウドウ)だ。 (今回、アイツはロクに動いてねぇよな。桂代にフォローを頼んでいるが、誰か援軍に……)    【バチンッ!】 「!!…来やがったな!」  玉川は即座に73区画へ通信を入れる。 「おい!兵頭、大丈夫か!返事をしろ!」 『…………』  しかし、応答は無い。 (クソッ!…誰だ?誰が73区画に来やがった?大角か!?まさか…)  すると、通信機から聞き覚えのない声が漏れ出る。 『……お前は、決して(ツミ)から逃れられない』
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