3人が本棚に入れています
本棚に追加
「前がガラ空きですよ、先輩っ!」
「思い出した気がするんだ。すごい前に友達と練習してた、スッゴいレアなやつさ!」
馬宙はさっきよりも晴れた表情でマリナにその技を披露した。
マリナはあっという間に剣を払い除けられ、唖然としていた。
そして、その場に座り込んだ。
「ど、どうかな…?うろ覚えだったんだ。」
ミリアはどこか涙を浮かべながらも笑っていた。
「しぇんぱい、しゅごいですぅー!」
ミリアは顔をくしゃくしゃにして、でも泣き笑いの混じった声で馬宙にこう言った。
「ひ、ひとまずは涙を拭こうよ、マリナ。」
「ふぁい、ありがどうございます…」
その後二人は少しだけ休憩を取り、後片付けを済ませて自分達の部屋に戻った。
ちなみに馬宙は先程の修連中もそうだが、過去の一件もあって右目の視覚を損失している。
そのため、剣技を打つときは一手一手大振りに打ち、歩くときは壁づたいじゃないとまともに歩けなかった。
「そういえば先輩、気になっていたんですが、いつから眼帯を?」
「いや、オレにも分かんないんだよ。ただ一つ分かったのは、その右目から出血があったってことくらいかな。さっき、やけに右手から鉄みたいな…血みたいな臭いがするって思ったら、思った通り右手に血がついてたんだ。」
「えぇ!?じゃあ、先輩の右目は…血まみれってことですか!?」
マリナは少しだけ震えていた。というのも年頃の女の子ならば当然と言ったところか。
一体何がオレの右目に出血させた?これだけはまだ思い出せてない。だけど、これだけひどい有り様なんだ…きっと、〈思い出すな〉っていう神様からのメッセージなんだろうな。
―寄宿舎・馬宙とマリナの部屋―
「オレは一旦お手洗いに行って、手を洗ってくるよ。誰か来たら教えてくれよ。」
「了解です、先輩っ!」
馬宙はマリナにこう指示すると、先ほど教えてもらったルートでお手洗いに向かった。
最初のコメントを投稿しよう!