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1「真平康太の待ち人」
ある放課後、神奈川県立横浜北高校に通う真平康太はTwitterに書き込まれた愛の告白を信じ、松の木の下でその人を待ち始めた。
県立横浜北高校の偏差値は60。東大や早慶に受かる学力は無いものの、年間に2人か3人は横浜国立大学に進学していく者が居て、隔年で早稲田大学や慶応大学に受かる者も居る中堅高校だ。
真平は校内成績で1位を取ることが常連の優等生。
真平は中学時代、高校受験の時しか勉強しなかった劣等生だった。中間テストや期末テストでは赤点ギリギリの30点から40点台をウロウロしていたが、中3の夏から入った塾の講師の指導が真平に合い、本人も勉強が楽しくなって学力を伸ばし、中学校の教師達の予想に反して横浜北高校に合格を果たした。
高校受験を通じて勉強が楽しくなった真平は、進学後も帰宅部で勉強専門を貫き、中間テストや期末テストで1位を取るのが本人の楽しみになった。クラスを見つめると、スクールカーストの底辺に見做された奴がクラスの連中から明らかにいじめられている(ただし、マスコミが報道するようなあからさまなモノではなく、暴力は無いものの陰湿な弄りやハブリ、一人ぼっちへの追い込みなど)が、真平の場合はそのようなことは無かった。人は自分より出来の良い奴より、出来の悪い奴の方がいじめやすいからだ。勿論、周囲より出来が良くていじめられるケースもあるが、真平は大丈夫だった。
真平の最低限の目標は横浜国立大学の経済学部に入ることである。学校内では勉強で敵無しの真平は、他の進学校や全国に目を向けており、ゆくゆくはもっと難関の東大や早慶にも入ろうと考えている。だが真平は高校時代までにどうしてもやりたいことがあった。
彼女が欲しかった。
真平は高校2年生だが、身長148㎝と背が低い。そのため、成長期でぐんぐん身長を伸ばして女子達と仲良くなる男子達に引け目を感じていた。学生時代の女子は社会人の女性より男を選ぶ目を養えていない。結局は勉強が出来なくても、身長180㎝を超えるバスケ部の先輩なんかに貴重な処女を捧げていった。真平が密かに思っていた同じクラスの渡辺志帆が、学級内で最低の成績の新井と付き合っていたのを知って悔しかった。
だが真平は自身に『モテ期』が来たと確信した。17歳の誕生日の昨日、真平のTwitterに愛のツイートが来たのだ。
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