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2「松の木の下の伝説」
横浜北高校の校舎のすぐ近くに在る、車が旋回するためのロータリーの中央島に1本の大きな松の木が生えている。其処で告白をして結ばれたカップルは必ず幸せになると云う伝説が有名だった。
真平は高校に入った後、買ってもらったスマホで時間を確認した。16時30分。まだ運動部が部活動を行っている。
真平は自分に告白して来る相手が誰なのかを想像していた。
松の木の下で告白をすると幸せになる伝説を聞いた時、会話に入っていたクラスの女子は5人だった。美少女の渡辺志穂、同じ中学だったが顔は普通の長野臨、肌荒れは酷いが顔の形は悪くない上村凪子、ギャル系であまりタイプではない小林奈々、眼鏡を掛けた文学少女の町山彩である。
この5人にはTwitterをやっていることを教えていない。だが、男子の何人かには話しているから、そこから知って告白してきたと考えるのは不自然な推理ではない。
告白してきたアカウントの女の子『るるる』は同じ高校で同学年であると真平に明かしていた。それも真平が高校に入ってTwitterを始めて間も無い頃から康太のフォロワーになって、やり取りを多く交わしていた。
だが『るるる』の正体は依然分からない。
(るるるちゃん、一体誰だろう?)
渡辺志穂は新井と付き合っているから有り得ない。長野臨は中学でもあまり話したことが無いから可能性は低い。上村も印象は薄い。顔文字を多用することから小林奈々っぽく思えるが、こういう告白をしてくること自体が小林らしくない。町山は暗いところがあるからあのようなメッセージを送るとは考えにくいが、もし『るるる』が町山なら真平は凄く嬉しい。
横浜北高校は男子の妄想ほどではないが、可愛い女の子が比較的多いと云われる。その理由は制服に合るらしく、有名デザイナーが意匠を凝らしたとされるチェックのミニスカートやリボンはシンプルでありながら可愛いと評判が高い。
しかし平均値を考えても意味が無い。思春期でほとんどの女子に勃起可能な高2の男子高校生でも、こいつだけは絶対に無理と云うブスデブデブスは高校に居る。
(あのデブスの日高真奈美だけは勘弁してくれよ)
なんて考えていると本当にあのデブスの日高が来るような気がした。真平の期待は不安と表裏一体だった。
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