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3「真平の不安」
「真平君、何してんの?」
スクールカーストの底辺を生きている飯田俊が、真平を見つけて話し掛けて来た。
飯田も帰宅部だが、真平とは事情が異なる。飯田の身長は167㎝で低めだが、140㎝台の真平は凄く羨ましい。元々サッカー部に所属していたが、クラスと部活の両方でいじめを受けて部活動に行かなくなった。もし教育委員会が真面な調査をしても、いじめ認定はされないだろう。飯田も暴力は一度も振るわれていない。しかし容赦無い弄りや無視、軽視などを味わい、練習中にケガをしかねない危険なプレーで迫って来る奴らも居た。そういうわけで飯田は高卒の学歴を得るためだけに高校に来ていた。
真平はビビった。
(まさか、飯田が俺に……?)
俺の青春は糞だった。
真平も飯田のことは下に見ているから、本当のことなど話したくなかった。
「人を待っているんだけど……」
友達の居ない飯田は話し相手が欲しかった。
「誰?」
(こんな奴に教えて堪るか)
真平は舌打ちして、声を荒げた。
「うるさいな、誰でも良いだろ。用が無いなら帰れよ!」
「ごめん……」
怒りながら思いついた真平は追い打ちを掛けるように、
「俺がチビだからってナメてんのか!?」
「そうじゃないけど……」
「だったら早く消えろ! ウザいんだよ!」
(悪いけど、学校ではナメられたら終わりだからな)
親にも反抗期が来ていない真平が激怒すると、飯田は普段温厚な真平の気分を損ねて申し訳なく思い、さっさと退散した。
離れて行く飯田の背中を見て真平は思った。
(いつもオドオドしやがって。だからいじめられるんだ)
『空気を読む』と云うのは想像より難しい。人は自分の気持ちや欲求などをそのまま表現した方が楽だ。だがいじめられている奴は普段人と喋っていないから、誰かに構って欲しい。そうなると周囲のことなんかお構い無しだ。そうやって、ある日誰かの気を損ねて反省したのは良いが、今度は周りを気遣い過ぎてオドオドする。すると周りからはますますうざったく見えるが、本人はそれに気付かない。空気になれ、自分の個性や存在感なんか出すな。
これを読んだら反論したくなるような奴だからいじめられたんだよ、お前は!
また、ああいう奴と一緒に居る所を見られると自分までスクールカーストの下にされかねない。
だから真平は飯田を躊躇なく追い払った。
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