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5「思考と決断」
本当にこのまま長野さんと帰って良いのだろうか?
もしも『るるる』ちゃんがこの後現れて、あんな愛の告白までしたのに自分が居なかったら凄く悲しむのではないだろうか。そしてそのことを根に持って、あることないこと学校中に噂を流すのではないか。
でも、長野も捨てがたい。確かに長野のルックスは丁度自分達の高校の偏差値と同じぐらいの『中の上の下』って感じだ。美少女の渡辺志帆や町山彩には敵わない。でも世の中の基準で云えば、ギリギリ『可愛い女の子』の枠には滑り込めるのではないか。
このまま待ったとしても、『るるる』は長野よりブスかもしれないし、あのツイート自体が嘘かもしれない。男子の誰かが自分を弄ろうと考えて仕組んだ下品な悪戯かもしれない。それくらいの想像力は真平には有る。
でも、仮に『るるる』が本当に自分を待っていたなら……自分は目先の女子の誘惑に負けて、愛の告白を反故にした最低な男になってしまう。
「一緒に帰ろうよ?」
彼女の方から誘ってきた事実である。
女の子の方からこんなこと言ってくれるなんてそうそう無い。長野は特別男勝りでぶっきら棒な性格と云う感じも無い。
そんな女子がこうも簡単に誘うだろうか。
「一緒に帰ろうよ?」
いや、平静は保っているが、絶対に凄く勇気が要ったはずだ。顔が見えないSNSではない。顔が見えている状況で一緒に帰ろうと誘ってくれたのだ。
迷うこと自体が失礼だ。
『るるる』には、待ったけど校門が閉じる時間になって仕方なく帰ったと言えば良い。
「ありがとう、一緒に帰ろう」
真平は自分から誘ったような言い方で承諾し、長野と帰り始めた。
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