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6「二人の帰り道」
真平と長野は同じ横浜市在住で高校は自宅から近かった。警察に補導されると面倒だから、二人は人で溢れる繁華街を避けて、人の少ない住宅街の道を並んで歩き始めた。
身長148㎝の真平が右、160㎝の長野が左に並ぶと、高校生カップルと云うより、長野がお姉さんで真平が弟のように見える。
真平は長野の横顔を見ると、自分の顎が上向きになってしまうのが嫌だった。自分の低身長を意識してしまうからだ。だから、出来るだけ前を向いて、長野の方をあまり見なかった。
夕暮れの太陽に押し出されたビル達の影を浴びて黝ずんだアスファルトを、長野は茶色のローファーで踏み締めながら真平に話し掛けた。
「真平君は誰を待ってたの?」
女の子は男子が「言えない」と言っているのにしつこく質問する。真平は長野が信用出来る女性か否かを確かめる。
「言ったろ? 口が軽い男にはなりたくないって」
背は低いが、長野には真平が少し頼もしく見えた。
「カッコいいね。でもそんなに肩の力入れなくて良いんじゃない?」
真平は長野の「カッコいい」を無視して、
「そうかな。高校って中学の時とはやっぱ違うじゃん」
中学との違いをさほど意識していなかった長野は、
「何処が?」
「中学校は同じ地域の奴だけど、高校は他の学区の奴らとも一緒になるじゃん。だから何となくそれで上手く行ってない奴とかも見ない?」
「うん、そうかも。藤沢さんって居たじゃん。同じ中学だけど、退学しちゃった」
初耳だった真平は目を少し丸くして長野の方を向き、
「あいつ、退学したの?」
「そうみたい。理由は私も分からないけど、学校来なくなっちゃって」
真平は首を前に向き直して、
「そう云えば、あいつ見ないなぁって思ってたんだ」
「高校退学しちゃったら就職とかどうするんだろう?」
「さぁ……」
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