7「二人で歩む進路」

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7「二人で歩む進路」

「私ね、高校も義務教育で良いと思うんだ。高校も出なかったら、今時何処に就職するんだろうって」  真平は長野の話を聞いていると、自分達が社会への巣立ちの過程を歩いていることを凄く意識した。 「俺は大学まで義務教育で良いと思っているよ」  未来を見つめている真平の横顔を見て、長野はウットリする恋する女子(わたし)を胸中にぐっと抑え込み、 「真平君って凄く勉強出来るようになったよね」 「うん、やっぱ勉強しないとダメだよ。高校受験の時の塾の先生に教えられたんだ。勉強は金を稼ぎに行くようなもんだって」  聴き慣れない面白い表現に感じた長野は気になって、 「そうなの?」 「うん。だって公務員とか大企業の正社員とかは立派な大学出てないと受からないよ。だから先生が言うには学生も働いているんだって。偏差値や内申書の点数を稼ぐために」 「なるほどね……」  真平は純粋に気になって、長野の方を向く。長野は真平と目が合うのが少し恥ずかしかったが、彼の顔が好みなので、飲み込むように黒い瞳で見つめた。 「長野は将来どうするの?」 「将来……」  長野は下を向いて、 「(真平君の)お嫁さんになりたいなぁ……」  幼稚園生のようだと思ったが、真平は長野の夢をバカにしないで、直接「好き」と伝えるのは恥ずかしいから、 「そっか……。相手が羨ましいな」 (えええっ!? 何!? それってどういうこと!? 私のことが好きってことなの!?) 「羨ましい?」  真平は首を縦に振って、 「羨ましいよ。長野はきっと良いお嫁さんになるだろうから」  長野は嬉しくなって笑顔で訊いた。 「本当?」  真平も微笑みながら、長野の顔を見つめて、 「うん。俺も頑張らないとな」  真平は再び前を向いた。長野はもう真平のことしか見ていなかった。横から長野の視線を感じながら、 「俺も長野のような素敵な女の子と結婚して、幸せな家庭を作るために一生懸命働くんだ。そのために今は一生懸命勉強しているんだよ」 「素敵……」 「長野は大学行こうって思わないの?」 「今の私の学力じゃ、偏差値の低い私大じゃないと無理だし、学費払えないし……」 「今度二人で勉強しようよ」 「えっ……」  二人の目は光り輝いていた。  真平も、なりすましていた長野も、『るるる』のことは忘れていた。
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