隣の君は……

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「先公だからって、何言っても許されると思うなよ!!」  浅沼亮司はムカついた勢いのままパックジュースの販売機を蹴飛ばした。 「おいおい、亮司君よ。自販機に八つ当りなさんな。お前さんの黄金の左で壊されちゃったら、俺は明日、フルーツ牛乳なしのお昼になるんだぞ」 「そんなの、知るか。つーか、昼メシにんなもん合わせるな」  好みにケチをつけられた佐々川翔は、かっかしている悪友に怒り返しもしないで、奢ってやるから物には当たるなと百円の放り投げた。 「ナイスキャッチ」  目付きが悪くて何もしてなくても怖がられる亮司と違って、キレたら亮司なんか目じゃないほど手のつけられない翔は、普段はにこやかで気の利く優良男子高校生だ。 「わーったよ」  心遣いに気持ちを少々和らげた亮司は、素直にコーヒー牛乳を選んで取り出した。 「んで、何やらかして、どんな嫌味を言われたわけ?」 「なんで、俺がやらかした前提なんだよ」 「だって、何もやらかしてないなら、亮司君に好き好んで近付く教師なんていないじゃん」 「うっせー」  ふてくされてみたものの、翔の指摘はズバリだった。 「……バイクで登校したのがバレたんだよ」 「うわー、ばっかだな。見つかんないように上手くやれよ」 「しゃーないだろ。途中、具合い悪そうな婆ちゃんがいたから、家まで送ってやったんだから」 「んで、遅刻してバレたってわけか」 「ちげーし。それが昨日の話で、今朝になって礼を言いたいとかって学校に電話があって、バイクに乗ってた少年だってチクられたんだよ」 「ぶはっ。マジか、最高すぎる。ミラクル亮司」 「あのな、こっちは笑いごとじゃねえんだぞ。なんでいいことしたのに、説教されなきゃなんねえんだよ」 「いや、もう、ツキまくりでしょ」  ひーひー腹を抱えて爆笑している翔を、亮司は泣く子も黙る睨みで止めさせた。
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