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「本、日、は、純、白、の、ドレ、スを、納品、しまし、た。最高、の花、嫁に、最適な、脇役を。Happy wedding!……と」
左手だけでのキーボードはもどかしいようです、ブツブツ言いながら打ち込んでいきます。
「わ、花々になってる!」
そんな打ち間違えはしょっちゅうです、私は口の端が笑顔になりながらスーツのしつけを進めます。
*
隼斗はパタンナーとしての仕事を、ゆっくりですが再開しています。
左手だけで型紙を作るのです、手で書くのは難しいのでPCを使ってです。PCで書くのも、左手で書くのも初めてです、一から訓練しているようなものです。苦労はあるようですが、それはリハビリにもなっているようです、夢中になっている横顔を見て、私は針を置きました。
「コーヒーでも淹れましょう」
「あ、俺、やる!」
集中していた筈の彼を邪魔してしまったと思いましたが、隼斗はぱっと立ち上がり、店の奥へと行きます。
近頃は彼がコーヒーを淹れてくれます。
以前はスーパーで、パックに入った挽いた豆を買っていましたが、彼にはなにやらこだわりがあるようで専門店まで足を運んで、少量ずつ購入しているようです。
実は少し離れたところに、度々タウン誌に載るお店があるようで──お蔭で毎日美味しいコーヒーを頂いています。
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