Interval

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 だって陽平は見た目がダサいし、体はだらしないし、不細工じゃないけど表情に覇気がない。いくら外見について指摘しても本人に改善する意思がないから、ぱっとせず、いつも彼女がいない。そもそも私以外に気軽に会える女の知り合いはきっといないだろう、かわいそうに。  ただ私は昔からの付き合いで、陽平が何でも人並み以上にそつなくこなすことや、頭の回転が早く、いざという時に頼りになることを知っている。仕事だって「かったるい」と言いながらも手を抜かずにやっているようで、「近いうちに役職付きになる」と話していた。名の知れた広告会社勤めだから、稼ぎは期待していいはず。  この通り、落ち着いて考えるとなかなかの“優良物件”だ。私ももう選り好みしていられない年になってきたし、古臭い考えかもしれないけど、さっさと結婚して寿退社したい。  IT企業の下請けならぬ“下僕”会社で毎日毎日、合わない数字や解けない数式とにらめっこする生活には飽き飽きだ。経理の仕事は嫌いじゃないけど、こんな日々が延々続くのかと思うと気が狂いそう。 「ああ、もう!」  いくらやっても解けないチェーンに嫌気が差し、ポケットに突っ込み直す。こんなものつけたって何か変わるわけじゃない。  化粧室へ逃げてきて10分経った。そろそろ陽平も頭が冷えているはずだ。適当に昔の話を振って機嫌を整えたら、結婚を機に去っていったみんなの名前を出す。それで、とうとう2人きりになってしまった現状を嘆く素振りを見せて、すかさずこう言うのだ、「30になってもお互い相手がいなかったら、付き合ってあげてもいいよ」と。  ドラマなんかでよく聞くこの台詞を、まさか自分が使う日が来るなんて。人生、何があるわからない。  とにかく自然に、何より冗談めかして言おう。「何バカなこと言ってる」と笑われた時―――何より真顔で「そんなのお断りだ」とつっぱねられた時、「冗談に決まってるじゃん」と逃げられるように。
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