3/6

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 展覧会は賑わっていた。いけばなではないから、関係者はいたとしてもそれほど多くはないだろう。けれど、私はいつ誰に、盗作のやつだ、などと後ろ指さされやしないかとびくびくしていた。  身を小さくして中を進む。アレンジメントの作品はどれも華々しくて、鮮やかだ。けれど、枝ものも葉ものもない。花木(かぼく)でさえかなり少ない。そしてひどく造形的。  違う。いけばなだったら……。私だったら……。  花たちが人間に見せる用の顔をしている。もっと自然の向きは違うでしょう? あなたは本当は上を向いていたいよね? そんなに密集していたら窮屈よね?  私は花たちに問いかける。けれど、大人しく気をつけしたアレンジメント作品の花たちに言葉は届かない。彼女たちはショーウィンドウに並べられたぬいぐるみのように、決められた笑顔を作り、決められた方向を向いている。  私はアレンジメントというものをよく知らなかった。いけばなとは圧倒的な違いがあることだけをその日知った。花の見せ方にも、美しさにも、いろいろな形があるのだ。  私はやっぱり、作り笑いではなくて彼女たちの自然な笑顔を見せてあげられる、いけばながいい。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加