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「今日は好きに生けてごらんなさい」  次のレッスンで先生が言った。私は何故か断れない。自分がこうしたい、こうした方がいい、と思っているようなことに比べて、先生の言うことの方がずっとずっと正しいような気がする。  でも、自由花は怖い。私の生けるものは私の作品とは呼べない代物なのだ。  否定もできず、だからといって肯定もしない私に、先生は言った。 「いままでやったことや、自分に限らずいままで見てきたいろんな作品などを思い出して、いま一番自分の生けたいように生けてごらん」  思い出していいの? 参考にしていいの? ということは自由花だけど、オリジナルじゃなくてもいいから挑戦してごらん、ということなのかな。 「わ、分かりました……」  私はずっと人前で生けていなかった自由花を、あの日以来はじめて生けた。  菊、ススキ、ほおづき、ナナカマド。  そうか。ずいぶんと季節が変わったのだな。花材を見て思う。いま一番自分の生けたいように、か……  先日の展覧会のことが頭に(よぎ)る。窮屈によそ行きの顔をした花たちがぎっしり――そうだ。  何も考えずに花に聞いてみる。あなたはどうしたい?  その花材が一番美しく映えるように、それだけを考えて入れてみた。
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